【第一話】くすぶっている人材は、どこにいるのか~年間5棟の工務店を、300棟の会社にしたい。15年前、一人の社長との出会い
2026年07月17日 ブログ
今から15年前の話です。
東日本の少し北のほうにある県で、一人の工務店の社長とお会いしました。
待ち合わせ場所は、その県の駅前にあるタリーズコーヒー。
この日が、私とその社長との長い物語の始まりでした。
初めてお会いした時の印象を、今でも鮮明に覚えています。
正直に言うと、少し威圧感を感じました。
社長という立場だからなのか。
それとも、大きな夢を抱いている人だけが持つ、独特の迫力だったのか。
名刺交換を終えて席に着くと、社長は会うや否や、迷うことなくこう話しました。
「僕は、今は年間5棟の工務店です。」
そして、一呼吸置いて続けました。
「でも、300棟の工務店にしたいんです。」
その言葉を聞いた瞬間、私は思わず前のめりになりました。
当時、その地域は決して人口が多いエリアではありませんでした。
住宅会社同士の競争もあり、そもそも住宅業界で働く人材の数も限られています。
そんな環境で、年間5棟から300棟を目指す。
普通に考えれば、とても簡単な話ではありません。
それでも、不思議と私は「無理です」とは思いませんでした。
社長の話し方や表情から、本気で会社を大きくしたいという覚悟が伝わってきたからです。
そこから私たちは、どのような人材を採用すれば会社を成長させられるのか、一緒になって考えました。
まず採用するべき人物は誰なのか。
どのような経験を持ち、どのような性格の人なら、この社長と一緒に会社を大きくしていけるのか。
話し合いを重ねた結果、最初のターゲットが決まりました。
社長の右腕となる、30代の住宅営業経験者。
ただ営業成績が良いだけではありません。
将来的には役員となり、営業部門を任せられるような人材です。
しかし、ターゲットが決まった瞬間、私は脂汗が止まりませんでした。
それもそのはずです。
まず私が調べなければならなかったのは、そもそもその県で、本当に年間300棟まで拡大できる可能性があるのかということでした。
住宅を建てる世帯はどれくらいいるのか。
競合となる住宅会社は何社あるのか。
地域の人口や住宅市場は、今後どのように変化していくのか。
社長の夢を、ただの夢で終わらせないためには、人材を探す前に、その可能性を自分なりに考える必要がありました。
そして、もう一つ大きな問題がありました。
優秀な右腕候補は、当然ながら今いる会社でも大事にされているはずです。
会社の中心で活躍し、十分な評価を受けている人が、ちょっとやそっとの話で転職するとは思えません。
しかも転職先は、当時まだ年間5棟の工務店です。
現在の安定した立場を手放し、小さな会社の未来に懸けてくれる人が、本当にいるのだろうか。
もちろん、やってみなければ分かりません。
だからこそ、この仕事は冒険なのだと思います。
誰も答えを知らない中で、一人の経営者と一緒に可能性を探す。
まだ出会ってもいない一人の候補者の人生を想像しながら、その人を探し続ける。
採用が決まった時、社長と一緒に涙を流すこともしばしばあります。
ただ、私が泣くのは、単純に採用できたことが嬉しいからではありません。
今の会社では、なかなか上に行くことができない。
能力があるのに評価されない。
もっと力を発揮できるはずなのに、長い間くすぶっている。
そんな候補者が、新しい会社と出会い、水を得た魚のように活躍し始める。
表情が明るくなり、仕事が楽しいと話してくれる。
家族も喜び、その人の人生が少しずつ良い方向へ変わっていく。
その瞬間を目の前で見た時、私は自然と涙が止まらなくなるのです。
年間5棟の工務店を、300棟の会社にしたい。
その夢をかなえる右腕候補は、いったいどこにいるのか。
私と社長の長い採用活動が、ここから始まりました。
第二話へ続きます。
